楽しい科学(理論)チャンネル

\(k\)次微分形式の定義

**\(k\)次微分形式の座標を用いない定義**
 可微分多様体上の任意の点\(p\)での\(k\)個の接ベクトル\(X_1,X_2,\cdots,X_k\in T_pM\)をスカラーに写す写像\(\omega:(X_1,X_2,\cdots,X_k)\to\mathbb{R}\)が、
 \((\mathrm{i})\)線形性
 \(Y_i\in T_pM\)について、 \[\omega(X_1,X_2,\cdots, X_i+Y_i\cdots,X_k)\] \[=\omega(X_1,X_2,\cdots, X_i\cdots,X_k)+\omega(X_1,X_2,\cdots,+Y_i\cdots,X_k)\] またスカラー\(a\)について、 \[\omega(X_1,X_2,\cdots, aX_i\cdots,X_k)\] \[=a\omega(X_1,X_2,\cdots, X_i\cdots,X_k)\]
 \((\mathrm{ii})\)交代性
\[\omega(X_1,X_2,\cdots, X_i,\cdots,X_j\cdots,X_k)\] \[=-\omega(X_1,X_2,\cdots, X_j,\cdots,X_i\cdots,X_k)\]
 \((\mathrm{iii})\)滑らかさ
 \(M\)上の滑らかなベクトル場\(Z_1,Z_2,\cdots,Z_k\)について、\(\omega(Z_{1},Z_2\cdots,Z_k)\)は多様体上の関数と見ることができて、 \[\omega(Z_1,\cdots,Z_k):p\mapsto\omega(Z_1,\cdots,Z_k)(p)\in\mathbb{R}\] が\(C^r\)級である。
 これら3つの条件を満たすとき、\(\omega:(X_1,X_2,\cdots,X_k)\to\mathbb{R}\)を\(k\)次微分形式と呼ぶ。
 注意してほしいのは、\(X_i\)の添え字の\(i\)が下についているから双対ベクトルの成分というわけではなく、ただ単に\(i\)番目の接ベクトルです。接ベクトルを\(X,Y,Z,\cdots\)としていくとアルファベットが足りないためです。この説明だけでは何を言っているんだ、、、と思うと思います。テンソルを導入すればシンプルに話をまとめることができますが、今回の目的は、微分形式を理解することにあります。少し回りくどくやっていきます。1つずつ見ていきましょう。

余接ベクトルについて

 第18回に余接ベクトルというものをやりました。微分形式は余接ベクトルの拡張です。余接ベクトル\(\alpha\)は、接ベクトル\(X\in T_pM\)を実数に写す線形写像でした。 \[\alpha_p:X_p\mapsto \alpha_p(X_p)\in\mathbb{R}\] 局所座標\(\varphi=(x^1,\cdots,x^m)\)を用いれば、 \[dx^i_p\left(\left(\frac{\partial}{\partial x^j}\right)_p\right)=\delta^i_j\] を満たす余接ベクトルの基底\(dx^i\)を用いて、 \[\alpha_p=\sum_{i=1}^m\alpha_{p,i}dx^i_p\] 接ベクトルに対する双対ベクトルの役割をするものが余接ベクトルです。つまり、接ベクトルを代入できるスロット\(\alpha_p(\Box)\)があり、 \[\alpha_p(X_p)=\sum_{i=1}^m\alpha_{p,i}X^i_p\] 接ベクトルの成分\(X^i_p\)の座標変換によってスカラー値\(\alpha_p(X_p)\)が不変になるようになるように\(\alpha_{p,i}\)の変換が決まっています。

1次微分形式

 1次微分形式\(\alpha(\Box)\)は以下の通りです。\(\Box\)には接ベクトルやベクトル場を代入できます。
(i) 接ベクトルを実数に写す線形写像である。\(X,Y\in T_pM,\ a\in \mathbb{R}\)について、 \[\alpha(X+Y)=\alpha(X)+\alpha(Y)\] \[\alpha(aX)=a\alpha(X)\]
(iii) なめらかなベクトル場\(Z\)について、\(\alpha(Z)\)を多様体上の\(C^r\)級関数と見ることができる。
(ii)の交代性は、2つのベクトルを入れ替えると、符号が変わるという性質ですが、1次微分形式は、ベクトルが1つしか代入できないので、考える必要はありません。(i)より微分形式は少なくとも余接ベクトルである必要があります。特定の1点\(p\)で、かつある局所座標\(\varphi=(x^1,\cdots,x^m)\)において、1微分形式は、 \[\alpha(\Box)=\sum_{i=1}^m\alpha_{i,p}dx^i_p(\Box)\] と表されます。更に(iii)より、\(\alpha(X):p\to\mathbb{R}\)対応が任意の点\(p\)で成り立つ必要があるので、チャート上で微分形式は、 \[\alpha(\Box)=\sum_{i=1}^m\alpha_idx^i(\Box)\] などと表されます。\(\alpha_i\)は、チャート上の関数で、\(dx^i\)はベクトル場の基底に対して、 \[dx^i\left(\frac{\partial}{\partial x^j}\right)=\delta^i_j\] を満たすものとします。なめらかなベクトル場\(X\)を1次微分形式に代入すると、 \[\alpha(X)=\sum_{i=1}^m\alpha_i\left(\sum_{j=1}^mX^j\frac{\partial}{\partial x^j}\right)\] \[=\sum_{i=1}^m\alpha_iX^i\in\mathbb{R}\] これが\(C^r\)級でなければなりません。\(X^i\)はなめらかなので、1次微分形式は\(\alpha_i\)が座標の成分に対して、\(C^r\)級であることが求められています。
余接ベクトル\(\alpha\)に接ベクトルを代入できるように\(\alpha(\Box)\)スロットを用意してあげて、これを接ベクトルを実数に写す線形写像とみなしてあげているわけです。このようにした余接ベクトルを1次微分形式と呼びます。線形写像ともみなせる1次微分形式に\(\int_M\)を付けて、積分とみなせるのはどういうことでしょうか?1次微分形式の基底\(dx^i\)は微小量として導入されたわけではなく、 \[dx^i\left(\frac{\partial}{\partial x^j}\right)=\delta^i_{\ j}\] を満たすように定められた基底ベクトルです。実は\(dx^i\)は微小量としての\(dx^i\)とも一致します。
 1次元多様体\(C\)のあるチャートと1の分割の組を\((U_i,\varphi_i,\phi_i)\)、局所座標を\(\varphi_i=x\)としておきます。\(U\)内のある点\(p_j\)での接ベクトル\(\varDelta_j \vec{x}\in T_{p_j} C\)は局所座標\(\varphi_i=x\)を採用すれば、 \[\varDelta \vec{x}_j=\varDelta x_{j}\left(\frac{\partial}{\partial x}\right),\ \varDelta x_{j}\in\mathbb{R}\] と表すことにします。本当は、\((\frac{\partial}{\partial x})\)ではなく\((\frac{\partial}{\partial x})_{p_j}\)などと書くべきでしょうが、どの\(p_j\)でも\(x\)軸上の基底ベクトルなので、統一して書いています。\(\varDelta x_{p_j}\)は\(x\)軸上で、\(\varDelta x_{p_j}=p_{j+1}-p_j\)となるように大きさを調整します。この接ベクトルっぽいベクトルを局所座標\(\varphi_i\)での1次微分形式\(\alpha=fdx\)で写すと、 \[\alpha(\varDelta\vec{x}_j)=fdx(\varDelta\vec{x}_j)=fdx\left(\varDelta x_{j}\frac{\partial}{\partial x}\right)\] \[=f\varDelta x_{j}\] これを各\(p_j\)で足し合わせれば局所座標でのリーマン和つまり、積分値になります。 \[\sum_{j}f\varDelta x_j=\sum_{j}\alpha(\varDelta\vec{x}_j)\] \(\varDelta x\)を十分小さく取れば、1次微分形式の\(dx(\varDelta\vec{x})\)の部分は、ベクトルを実数に写す線形写像でかつ、微小量\(dx\)と同じ意味になります。これを単に \[\int_C\alpha=\sum_{U_i\subset C}\int_{U_i}\phi_i\alpha=\sum_{U_i\subset C}\int_{\varphi_i(U_i)}\phi_i\circ\varphi_i^{-1}(x)fdx\] と表しているわけですね。重なりのある2つチャートの局所座標を\(\varphi_i=x,\varphi_j=y\)とします。1次微分形式は、それぞれのチャートで \[\alpha=f(x)dx=g(y)dy\] と表せるとしましょう。2つのチャートの共通部分のリーマン和は、 \[\int_{U_i\cap U_j}\alpha=\int_{\varphi_i(U_i\cap U_j)}fdx=\int_{\varphi_j(U_i\cap U_j)}f\frac{dx}{dy}dy\] \[\int_{U_i\cap U_j}\alpha=\int_{\varphi_j(U_i\cap U_j)}gdy\] これは曲線\(C\)が向き付け可能、リーマン和をなす細長い長方形の底辺が、どの座標でも符号が一致していることとも同値です。