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運動方程式

/*ニュートン力学を勉強する意味 残念ながら、ニュートン力学ではミクロな世界や極端に重い物体の付近や光速に近い物理現象を説明することはできない。しかし、身の回りで起きている雨滴の落下から、惑星の運動までかなり広い範囲の運動を説明することができる。更に量子力学を勉強するために、エネルギーや運動量について知っておく必要があるし、相対性理論は、ニュートン力学に補正を入れた形をしているため、まずは、ニュートン力学を勉強することが必要なのだ。*/
本来物体は大きさがあり、物体の運動には重心や回転などの要素があるが、ニュートン力学で扱う物体は全て質量をもつ点として扱う。ニュートン力学第1法則の準備として位置と速度をベクトルで定義しておく。
図のような座標系Kで原点から見た点Pの位置を x:=(xyz) と定める。空間上で場所を表すには、縦、横、高さの3つを指定する必要がある。地図のような平面では、縦(緯度)、横(経度)の2つを指定する必要があるので、x=(x,y)と表せる。さらに点Pが動いている場合、Pの位置は時間の関数となるので、 x(t)=(x(t)y(t)z(t)) と表す。点Pの速度を v(t):=ddtx(t) と定義する。v(t)=x˙(t)とも表す。位置をベクトルで表したため、各成分の時間微分でも速度を表すことができる。ニュートン力学のゴールは、x=x(t)位置を時間で表すことである。これによって何時何分に物体がどこにあるということを知ることができる。しかしそれが難しい場合は妥協案として、何かのパラメータsを用いて、x=x(s)のように軌道(軌跡)を求めることもある。例として、一定の速度、v0=(vx,vy,vz)で進む物体の運動の解は、 v0=ddtx(t) x成分についてみると、 vx=ddtx(t) 両辺をtで積分すると、 vxdt=dx(t)dtdt x(t)=vxt+cx cxは積分定数、y,z成分にいても同様なので、x(t)=vt+cの等速直線運動になる。(静止もv=0の等速直線運動とみなせる。)普段の経験として我々が見ている光景では、空気抵抗や摩擦があるせいで、ぱっと見力が加わっていない状態でも速度が徐々に減衰して見えるが、理想的には、力を受けいていない物体は静止もしくは等速直線運動をするのである。しかし、力を受けいていない物体が等速直線運動するためには、その物体が置かれている環境(系)も静止、等速直線運動している必要がある。いきなり車(系)が急発進した場合、車の中のものが、静止していたのに発進した方とは逆向きに動き出すことがある。この現象の解決方法は車の外から見ることで、外から見ると、ものが急に動き出すわけではなく、車が急発進して、ものがその場に置いて行かれているように見えるはずである。そもそも力がはたらかない物体が等速直線運動するためには、系にも制限がかかっている。このニュアンスでニュートン力学第一法則と言っている教本が多いように思える。
**ニュートン力学第1法則**
力を受けていない物体は静止または等速直線運動する。
 他の物体や、力を受けていない物体が静止または等速直線運動するという法則であるが、真の意味としては力を受けいていない物体が等速直線運動するためには、加速度系であってはならないということである。等速直線運動する系を慣性系Kという。座標系Kから見てr0離れていて一定の速度Vで移動する座標系をKとする。Kでの物体の位置をx(t)Kでの物体の位置をx(t)とすると、 (1)x(t)=x(t)+r0+Vt と表すことができる。両辺の時間微分は (2)x˙(t)=x˙(t)+V
上の図はKから見て物体の速度がVであったときである。(2)式にx˙(t)=Vを代入すると、 V=x˙(t)+V, x˙(t)=0 つまりKから見ると物体が静止して見える。次にKから見て物体の任意の一定の速度vで動いているとき、(2)式にx˙(t)=vを代入すると、 v=x˙(t)+V, x˙(t)=vV Kから見て、物体の速度がvVの等速直線運動をしているように見える。Kが慣性系であるとき、一定の速度Vで移動する座標系Kも第1法則を満たす。一般に慣性系Kに対して(1)式のような座標変換で得た座標系も慣性系となる。
 次に第2法則の準備として運動量と加速度を定義する。 物体の質量m、速度をv(t)とする。 物体の運動量を次のように定義する。 p(t):=mv(t) 加速度を次のように定義する。 a(t):=ddtv(t) a(t)=v˙(t)=x¨(t)のような表記もされる。
**ニュートン力学第2法則**
慣性系において物体に加わる力Fを次のように定義する。 F(t):=ddtp(t)
上記の方程式を運動方程式という。運動量pを質量mと、速度vの積で定義したのは、より高速であるまたはより質量の大きい物体の運動量を時間変化させるためにはより大きな力が必要になるようにするためである。質量は時間に依らない場合、 F(t)=ddt(mv(t))=mddtv(t)=ma(t) と書き換えることもできる。力とは質量と加速度の積でも表すことができる。第1法則の時に紹介した(2)式の座標変換ガリレイ変換という。運動方程式にガリレイ変換をしてみよう。v(t)v(t)+Vと変換した運動方程式は F(t)=mddt(v(t)V) となる。少し丁寧に計算すると、 F(t)=mlimΔt0(v(t+Δt)V)(v(t)V)Δt F(t)=mlimΔt0v(t+Δt)v(t)Δt F(t)=mddtv(t) 運動方程式はガリレイ変換に対して不変である。座標の取り方によって式の形は変わるかも知れないが、運動方程式は任意の慣性系で成り立つことを意味する。 a(t)=ddtv(t)=F(t)m と変形すれば同じ力を受けている物体の加速度は質量に反比例することがわかる。
**ニュートン力学第3法則**
物体1物体2の間に相互作用がはたらくとき、物体1から物体2にはたらく力をF12と物体2から物体1にはたらく力をF21は同一作用線上で逆向きにはたらく。 F12=F21
例をだすと、地上に接している物体の重力と垂直抗力や、質量のある物体どうしにはたらく万有引力などがある。より一般にある系で、n個の物体が相互作用しあう場合、 i=1,i1n1F1i+i=1,i2n1F2i+i=1,i3n1F3i++i=1n1Fni=0 となる。