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角運動量保存則、運動量保存則
今回は質点の回転運動、おまけで運動量保存則について説明する。回転は2種類ある。(俺か俺以外か、、、しーん。すいません、まじめにやります!)地球が北極と南極を通る軸で回転する自転、地球が太陽の周りを回る公転がある。今回話すのは公転の話だ。実際の広がりを持つ物体を質点の集まりとみなすことで物体の自転運動を記述することができる。そのため今回の話もためになる。回転の運動を記述するための物理量を定義していく。
まずは原点\(O\)における、物体の角運動量\(\boldsymbol{L}(t)\)を物体の位置\(\boldsymbol{x}(t)\)と物体の運動量\(\boldsymbol{p}(t)\)の外積で定義する。
\[\boldsymbol{L}(t):=\boldsymbol{x}(t)\times\boldsymbol{p}(t)\]
次に原点\(O\)における物体のトルク\(\boldsymbol{\tau}(t)\)を角運動量\(\boldsymbol{L}(t)\)の時間微分で定義する。
\[\boldsymbol{\tau}(t):=\frac{d}{dt}\boldsymbol{L}(t)\]
トルク\(\boldsymbol{\tau}(t)\)を別の書き方をすると、
\[\boldsymbol{\tau}(t)=\frac{d}{dt}(\boldsymbol{x}(t)\times\boldsymbol{p}(t))\]
\[=\left(\frac{d}{dt}\boldsymbol{x}(t)\right)\times\boldsymbol{p}(t)+\boldsymbol{x}(t)\times\left(\frac{d}{dt}\boldsymbol{p}(t)\right)\]
\[=\left(\frac{d}{dt}\boldsymbol{x}(t)\right)\times\boldsymbol{p}(t)+\boldsymbol{x}(t)\times\left(\frac{d}{dt}\boldsymbol{p}(t)\right)\]
\[=m\boldsymbol{v}(t)\times\boldsymbol{v}(t)+\boldsymbol{x}(t)\times\boldsymbol{F}(t)\]
\[\boldsymbol{\tau}(t)=\boldsymbol{x}(t)\times\boldsymbol{F}(t)\]
このように位置\(\boldsymbol{x}(t)\)と力\(\boldsymbol{F}(t)\)の外積で表すことができる。
トルクという物理量がイメージしにくい人は水車をイメージしよう。水車は半径が大きいほど、川の流れ(水が水車に加える力)が大きいほど回転する力が強い。この水車の回転する力がトルクである。今は原点について角運動量、トルクと定義したが、任意の慣性系で任意の点をとると位置がその点に依って変化してしまうのでトルク、角運動量も変わってしまう点は注意が必要だ。次にトルクが\(\boldsymbol{0}\)のとき角運動量\(\boldsymbol{L}(t)\)、力\(\boldsymbol{F}(t)\)にはどのような制約がかかるか見ていこう。
\[\boldsymbol{\tau}(t)=\boldsymbol{x}(t)\times\boldsymbol{F}(t)=\boldsymbol{0}\]
上記の式を満たす条件は\(\boldsymbol{x}(t)\)と\(\boldsymbol{F}(t)\)が平行で無ければならない。
このように常に中心に向かっている力を中心力という。\(\boldsymbol{x}\)方向の単位ベクトル\(\hat{\boldsymbol{x}}\)とすると、向心力は\(F(\boldsymbol{x})\hat{\boldsymbol{x}}\)と表すのがよさそうである。トルク\(\boldsymbol{\tau}(t)\)は角運動量\(\boldsymbol{x}(t)\times\boldsymbol{p}(t)\)の時間微分なので、
\[\frac{d}{dt}(\boldsymbol{x}(t)\times\boldsymbol{p}(t))=\boldsymbol{x}(t)\times F(\boldsymbol{x})\hat{\boldsymbol{x}}=\boldsymbol{0}\]
\[\boldsymbol{x}(t)\times\boldsymbol{p}(t)=\boldsymbol{const.}\]
物体にはたらく力が向心力であるのとき角運動量が時間に依らない定ベクトルで表すことができる。
**角運動量保存則**
物体にはたらく力が点\(O\)を中心とする向心力である場合、時間に依らない定ベクトル\(\boldsymbol{L}\)を用いて次の式が成り立つ。
\[\boldsymbol{x}(t)\times\boldsymbol{p}(t)=\boldsymbol{L}\]
物体が\(n\)個ありそれぞれの物体の点\(O\)からの位置を\(\boldsymbol{x}_i(t)\)、運動量を\(\boldsymbol{p}_i(t)\)、\((i=1,2,3\cdots,n)\)、点\(O\)のトルク総和が\(\boldsymbol{0}\)である場合、
\[\frac{d}{dt}(\sum_{i=1}^{n}\boldsymbol{x}_i(t)\times\boldsymbol{p}_i(t))=\boldsymbol{0}\]
であるから、
\[\sum_{i=1}^{n}\boldsymbol{x}_i(t)\times\boldsymbol{p}_i(t)=\boldsymbol{const.}\]
複数の物体の相互作用で向心力という制約はなくなってしまうが、トルクの総和が\(\boldsymbol{0}\)という条件下で運動量の総和が時間に依らず一定である。
角運動量の大きさを求めたい。計算量を減らすため次のことを行う。位置\(\boldsymbol{x}\)と速度\(\boldsymbol{v}\)が成す平面に\(xy\)平面を取る。図のように\(r,\ \theta\)をとると、
\[\boldsymbol{x}=\begin{pmatrix}r\cos\theta\\r\sin\theta\\0\end{pmatrix}\]
これを微分して速度\(\boldsymbol{v}=\dot{\boldsymbol{x}}\)を得る。
\[\dot{\boldsymbol{x}}=\begin{pmatrix}\dot{r}\cos\theta-r\dot{\theta}\sin\theta\\\dot{r}\sin\theta+r\dot{\theta}\cos\theta\\0\end{pmatrix}\]
角運動量を求める。
\[\boldsymbol{L}=m\boldsymbol{x}\times\dot{\boldsymbol{x}}\]
\[=m(r\dot{r}\cos\theta\sin\theta+r^2\dot{\theta}\cos^2\theta-r\dot{r}\cos\theta\sin\theta+r^2\dot{\theta}\sin^2\theta)\boldsymbol{e}_z\]
\[|\boldsymbol{L}|=mr^2\dot{\theta}\]
また距離、速さは
\[|\boldsymbol{x}|=\sqrt{\boldsymbol{x}\cdot\boldsymbol{x}}=r\]
\[|\dot{\boldsymbol{x}}|=\sqrt{\dot{\boldsymbol{x}}\cdot\dot{\boldsymbol{x}}}=(\dot{r}\cos\theta-r\dot{\theta}\sin\theta)^2+(\dot{r}\sin\theta+r\dot{\theta}\cos\theta)^2\]
\[=\sqrt{\dot{r}^2+r\dot{\theta}^2}\]
\(r,\theta\)を使うことで、\(x=r,\dot{x}=\sqrt{\dot{r}^2+r\dot{\theta}^2},\ L=mr^2\dot{\theta}\)と表すことができる。回転の運動を扱う際にとても有効である。
続いて運動量保存則を説明する。物体にはたらく力\(\boldsymbol{F}=\boldsymbol{0}\)であるとき、
\[\frac{d}{dt}m\boldsymbol{v}=\boldsymbol{0}\]
\[m\boldsymbol{v}=\boldsymbol{const.}\]
**運動量保存則**
物体にはたらく力\(\boldsymbol{F}=\boldsymbol{0}\)時間に依らない定ベクトル\(\boldsymbol{p}\)を用いて次の式が成り立つ。
\[m\boldsymbol{v}=\boldsymbol{p}\]
なんだ?この保存則は?ただの慣性の法則じゃねーか。まったくもってその通りである。ニュートン力学において、はたらく力が保存力だったらエネルギー、向心力の場合は角運動量、0の場合は運動量が保存することを示してきた。解析力学では時間発展、空間回転、空間並進に対する対称性として導かれる保存量なのである。後に話すことにする。\(n\)個の物体のみが相互作用を及ぼす系において、\(n\)個の物体それぞれにはたらく合力を\(\boldsymbol{F}_i\)、運動量を\(\boldsymbol{p}_i,\ (i=1,2,\cdots,n)\)とすると、ニュートン力学第3法則から
\[\boldsymbol{F}_1+\boldsymbol{F}_2+\cdots+\boldsymbol{F}_n=\boldsymbol{0}\]
\[\frac{d}{dt}(\boldsymbol{p}_1+\boldsymbol{p}_2+\cdots+\boldsymbol{p}_n)=\boldsymbol{0}\]
\[\boldsymbol{p}_1+\boldsymbol{p}_2+\cdots+\boldsymbol{p}_n=\boldsymbol{const.}\]
力が今考えている物体系のみではたらいているとき限定で成り立つ。物体が衝突する前後で運動量が保存するので物体の衝突の問題で便利な式である。今までやってきた保存則は運動方程式を解くためのテクニックである。2次方程式であれば解の公式や、判別式、平方完成などの技を使って解いてきたと思う。これらと微分方程式の技を使って次回以降実際の運動方程式を解いていきたい。