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地表付近の物体の運動

前回までは太陽と、惑星とかスケールの大きい話であったが今回はスケールのでかい話であったが、今回は地球上の物体の運動である。
今からすごくおおざっぱな計算をする。地球を点とみなし上の図は地球で\(A\)を地球表面のある地点としよう。地表までの距離を\(R\)、地球の質量を\(M\)とする。 地表\(1\ \mathrm{kg}\)にあるの物体にはたらく万有引力の大きさ\(f\)は、数字はwikiから持ってきた。 \[f=\frac{GMm}{R^2}=\frac{6.674\times10^{-11}\mathrm{m^{-3}kg^{-1}s^{-2}}\times5.972\times10^{24}\mathrm{kg}\times1\mathrm{kg}}{(6.378\times10^6\mathrm{m})^2}\] \[f=9.797\cdots\mathrm{kg\ m\ s^{-2}}\simeq9.8\mathrm{kg\ m\ s^{-2}}\] 世界一高い山はエベレストで高さは\(h=8848\mathrm{m}\)と乗っていた。エベレスト山頂で再び\(f\)を求めてみよう。 \[f=\frac{GMm}{(R+h)^2}=\frac{6.674\times10^{-11}\mathrm{m^{-3}kg^{-1}s^{-2}}\times5.972\times10^{24}\mathrm{kg}\times1\mathrm{kg}}{(6.378\times10^6\mathrm{m}+8.848\times10^3\mathrm{m})^2}\] \[f=9.770\cdots\mathrm{kg\ m\ s^{-2}}\simeq9.8\mathrm{kg\ m\ s^{-2}}\] だいたい同じ値になった。地球表面上のある地点\(A\)が地表とみなせる(平坦な地面)くらいの範囲で運動を考えるとき、物体が地球から受ける万有引力は\(1\mathrm{kg}\)あたり、約\(9.8\mathrm{kg\ m\ s^{-2}}\)とみなせる。自由落下している物体の加速度\(g\)は、 \[g:=\frac{f}{m}=9.8066\ \mathrm{m\ s^{-2}}\] くらいになるらしい。上記のおおざっぱな計算も実際の重力加速度と近い値になった。 地表付近で投げられたボールの運動を記述してみよう。
速度\(\boldsymbol{v}\)、重力\(\boldsymbol{F_g}\)の2つのベクトルを含む平面を\(x,y\)平面とすることで、2次元で運動を記述できる。さらに投げ始めた位置を原点に取ることで初期位置も\(\boldsymbol{x}(0)=\boldsymbol{0}\)とできる。 ボールの運動方程式は、 \[m\frac{d^2}{dt^2}\begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix}=m\begin{pmatrix}0\\-g\end{pmatrix}\] この微分方程式を解いて、初期条件\(\boldsymbol{x}(0)=(0,0)\)、\(\boldsymbol{v}(0)=(v_{0x},v_{0y})\)をいれて終わりなのだが、エネルギー系を使って解いてみよう。\(U=mgy\)のようなスカラー関数は \[-\nabla U=m\begin{pmatrix}0\\-g\end{pmatrix}=\boldsymbol{F}\] を満たす。つまり保存力であるから、力学的エネルギー保存則が成り立つ。ここからエネルギー系全般の話をする。力学的エネルギー保存則は \[\frac{1}{2}m(\dot x^2+\dot y^2)+U(x,y)=E(x,y,\dot x,\dot y)\] 力学的エネルギーを位置、速度の関数とみて偏微分すると、 \[\frac{\partial E}{\partial x}=\frac{\partial U}{\partial x}=-F_x\tag{1}\] \[\frac{\partial E}{\partial \dot x}=m\dot x\tag{2}\] エネルギー系から運動量と力を得ることができる。(2)式を時間で積分すると、 \[\frac{d}{dt}\frac{\partial E}{\partial \dot x}=m\ddot x=F_x=-\frac{\partial E}{\partial x}\] おおー!いいじゃん。 \[\frac{d}{dt}\frac{\partial E}{\partial \dot x}=-\frac{\partial E}{\partial x}\tag{3}\] 左辺が運動量の時間微分で、エネルギー系から\(x\)軸方向の運動方程式を分離することができた。\(y\)軸方向にも同じことが言える。今回はこの性質を使ってこの問題を解いていく。更に言うとここの\(E\)は力学的エネルギーではなくても(1)式の形さえしていれば成り立つ。のは後ほど解析力学で説明することにしよう。うん、後で後で、今回は \[\frac{1}{2}m(\dot x^2+\dot y^2)+mgy=E(x,y,\dot x,\dot y)\] から一般解を求めたい。 \[\frac{d}{dt}\frac{\partial E}{\partial \dot x}=-\frac{\partial E}{\partial x}\] \[\frac{d}{dt}(m\dot x)=0,\ \dot x=c_1,\ x=c_1t+c_2\] 続いて\(y\)成分 \[\frac{d}{dt}\frac{\partial E}{\partial \dot y}=-\frac{\partial E}{\partial y}\] \[\frac{d}{dt}(m\dot y)=-mg,\ \dot y=-gt+c_3,\] \[y=-\frac{1}{2}gt^2+c_3t+c_4\] 初期条件を使うと、 \[x=v_{0x}t,\ y=-\frac{1}{2}gt^2+v_{0y}t\] とわかる。普通に解くより長くなってしまった。しかし、エネルギー系の方程式からスタートして、物体の運動を解くこともできる。おまけで \[\frac{1}{2}m(\dot{x}(t)^2+\dot{y}(t)^2)+\frac{C}{2}(x(t)^2+y(t)^2)=E(x,y,\dot x,\dot y)\tag{4}\] \[\sqrt{x(t)^2+y(t)^2}=l\tag{5}\] で与えられる物体の運動を解いてみよう。\(\sqrt{x^2+y^2}=l\)の制限付きであることに注意する。 \[\frac{d}{dt}\frac{\partial E}{\partial \dot x}=-\frac{\partial E}{\partial x}\] \[\frac{d}{dt}(m\dot x)=-Cx\] (5)式の条件から、\(x=l\cos\phi,y=l\sin\phi\)と置いて\(x=l\cos\phi\)を代入すると、 \[ml\frac{d}{dt}(-\dot\phi\sin\phi)=-Cl\cos\phi\] \[-\ddot\phi-\dot\phi^2\cos\phi=-\frac{C}{m}\cos\phi\] 両辺の比較から \[\dot\phi=\frac{C}{m},\ \phi=\frac{C}{m}t-\phi_0\] \(C/m=\omega\)とすると一般解は、 \[x=l\cos(\omega t-\phi_0),\ y=l\sin(\omega t-\phi_0)\] 各速度一定の円運動ということがわかる。