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ベクトルのスカラー積、ベクトル積

/*ベクトルを勉強する意味
 空間上のある1点から別の1点を結ぶ矢印がベクトルである。ベクトルは大きさと向きを同時に表すことができるため位置や力などを表すにも、とても便利である。実際ニュートンの運動方程式は3次元上で3成分の方程式\[F_x(x,y,z,t)=m\frac{d^2x(t)}{dt^2},\ F_y(x,y,z,t)=m\frac{d^2y(t)}{dt^2}\] \[,\ F_z(x,y,z,t)=m\frac{d^2z(t)}{dt^2}\] で記述されるが、それを1つの式 \[\boldsymbol{F}(\boldsymbol{x},t)=m\frac{d^2\boldsymbol{x}(t)}{dt^2}\] で表すことができる。ベクトルを使った公式、法則はかなり多い。一般にベクトルは\(n\)任意の次元のものを作れるが、初めは3次元からスタートするとしよう!
終わり*/
/*右手系とは?
 \(x,y,z\)軸は大抵順番が決まっている。人によって思い描く座標が右回りに\(x,y,z\)なのか、左回りに\(x,y,z\)なのかで定義する式や法則が違ってしまうかも知れない。そのため多くの人は右手系というものを採用している。右手の親指\(x\)、人差し指\(y\)、中指\(z\)として、直交座標系を作るようにしよう。またこのページではスカラー(数字)、ベクトル(複数のスカラーを並べたもの)を区別するためベクトルを太字にしている。*/
 図のような破線で書かれた直方体の辺の長さをそれぞれ\(a_1,a_2,a_3\)とする。点\(O\)から点\(P\)までの長さと向きを持つベクトル\(\boldsymbol{a}\)を次のように定義する。 \[\boldsymbol{a}:=\begin{pmatrix}a_{1}\\a_{2}\\a_{3}\end{pmatrix}\] ベクトルは\(x\)成分\(a_1\)、\(y\)成分\(a_2\)、\(z\)成分\(a_3\)の3つの成分書き表すことができる。この3つの成分が決まればベクトルの大きさ、向きが勝手に決まる。逆に向きと大きさが決まれば3つの成分を決めることもできる。図では原点スタートのベクトル(位置ベクトル)にしているが、ベクトルは空間のどこを始点にしてもよい。
 点Aを始点としたベクトル\(\boldsymbol{a}=(a_1\ \ a_2\ \ a_3)\)、と点Bを始点としたベクトルが\(\boldsymbol{b}=(a_1\ \ a_2\ \ a_3)\)のように同じ成分で表せたとしよう。すると以下の式が成り立つ。 \[\boldsymbol{a}=\begin{pmatrix}a_{1}\\a_{2}\\a_{3}\end{pmatrix}=\boldsymbol{b}\] つまり、成分が同じであれば同じベクトルとして扱う。ベクトルは平行移動できる。 ベクトルの大きさ\(|\boldsymbol{a}|\)を次のように定義する。これによりベクトルが長い、短いなどが比較できる。ベクトルから向きを取り除いたものである。 \[|\boldsymbol{a}|:=\sqrt{a_1^2+a_2^2+a_3^2}\] 実数\(c\)、ベクトル\(\boldsymbol{a}=(a_1\ a_2\ a_3),\ \boldsymbol{b}=(b_1\ b_2\ b_3)\)についてベクトルの足し算、スカラー倍を次のように定義する。 \[\boldsymbol{a}+\boldsymbol{b}:=\begin{pmatrix}a_{1}+b_1\\a_{2}+b_2\\a_{3}+b_3\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}b_{1}+a_1\\b_{2}+a_2\\b_{3}+a_3\end{pmatrix}=\boldsymbol{b}+\boldsymbol{a}\] \[c\boldsymbol{a}:=\begin{pmatrix}ca_1\\ca_2\\ca_3\end{pmatrix}\] 単位ベクトルを大きさ1のベクトルとすると\(\boldsymbol{a}\)と同じ方向の単位ベクトルを\(\hat{\boldsymbol{a}}\)。 \[\hat{\boldsymbol{a}}:=\frac{\boldsymbol{a}}{|\boldsymbol{a}|}\] と表すことができる。\(x\)軸方向正の単位ベクトル\(\boldsymbol{e}_1\)、\(y\)軸方向正の単位ベクトル\(\boldsymbol{e}_2\)、\(z\)軸方向正の単位ベクトル\(\boldsymbol{e}_3\)を \[\boldsymbol{e}_1:=\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix},\ \boldsymbol{e}_2:=\begin{pmatrix}0\\1\\0\end{pmatrix},\ \boldsymbol{e}_3:=\begin{pmatrix}0\\0\\1\end{pmatrix}\] とすると、ベクトル\(\boldsymbol{a}\)は \[\boldsymbol{a}=a_1\boldsymbol{e}_1+a_2\boldsymbol{e}_2+a_3\boldsymbol{e}_3\] \[\boldsymbol{a}=\sum_{i=1}^{3}a_i\boldsymbol{e}_i\] とも表せる。この書き方をすれば、\(4\)次元の時は、\(\sum\)の上の数字を\(3\)から\(4\)にすることでほかの次元に対応できそうである。今回は3次元だがそのように\(n\)次元ベクトルに拡張する。
**ベクトルの内積**
ベクトル\(\boldsymbol{a}=(a_1\ \ a_2\ \ a_3),\ \boldsymbol{b}=(b_1\ \ b_2\ \ b_3)\)について内積を次のように定める。 \[\boldsymbol{a}\cdot \boldsymbol{b}:=a_1b_1+a_2b_2+a_3b_3\]
ベクトルの内積は交換法則、分配法則が成り立つ。 ベクトル\(\boldsymbol{a}=(a_1\ \ a_2\ \ a_3),\ \boldsymbol{b}=(b_1\ \ b_2\ \ b_3),\ \boldsymbol{c}=(c_1\ \ c_2\ \ c_3),\)について、 \[\boldsymbol{a}\cdot\boldsymbol{b}=a_1b_1+a_2b_2+a_3b_3=b_1a_1+b_2a_2+b_3a_3=\boldsymbol{b}\cdot\boldsymbol{a}\] \[\boldsymbol{a}\cdot(\boldsymbol{b}+\boldsymbol{c})=\begin{pmatrix}a_{1}\\a_{2}\\a_{3}\end{pmatrix}\cdot\begin{pmatrix}b_{1}+c_1\\b_{2}+c_2\\b_{3}+c_3\end{pmatrix}\] \[=a_1(b_1+c_1)+a_2(b_2+c_2)+a_3(b_3+c_3)\] \[=a_1b_1+a_2b_2+a_3b_3+a_1c_1+a_2c_2+a_3c_3\] \[=\boldsymbol{a}\cdot\boldsymbol{b}+\boldsymbol{a}\cdot\boldsymbol{c}\] 続いてベクトルの外積をやるがこれは3次元限定の技でほかの次元ではもっとほかの外積の定義が必要である。
**ベクトルの外積**
ベクトル\(\boldsymbol{a}=(a_1\ \ a_2\ \ a_3),\ \boldsymbol{b}=(b_1\ \ b_2\ \ b_3)\)について外積を次のように定める。 \[\boldsymbol{a}\times \boldsymbol{b}:=\begin{pmatrix}a_2b_3-a_3b_2\\a_3b_1-a_1b_3\\a_1b_2-a_2b_1\end{pmatrix}\]
 ベクトルの外積は、分配法則が成り立つ。ベクトル\(\boldsymbol{a}=(a_1\ \ a_2\ \ a_3),\ \boldsymbol{b}=(b_1\ \ b_2\ \ b_3),\ \boldsymbol{c}=(c_1\ \ c_2\ \ c_3),\)について、 \[\boldsymbol{a}\times (\boldsymbol{b}+\boldsymbol{c})=\begin{pmatrix}a_2(b_3+c_3)-a_3(b_2+c_2)\\a_3(b_1+c_1)-a_1(b_3+c_3)\\a_1(b_2+c_2)-a_2(b_1+c_1)\end{pmatrix}\] \[=\begin{pmatrix}a_2b_3-a_3b_2\\a_3b_1-a_1b_3\\a_1b_2-a_2b_1\end{pmatrix}+\begin{pmatrix}a_2c_3-a_3c_2\\a_3c_1-a_1c_3\\a_1c_2-a_2c_1\end{pmatrix}\] \[=\boldsymbol{a}\times\boldsymbol{b}+\boldsymbol{a}\times\boldsymbol{c}\]  交換法則は成り立たない。 \[\boldsymbol{a}\times \boldsymbol{b}=\begin{pmatrix}a_2b_3-a_3b_2\\a_3b_1-a_1b_3\\a_1b_2-a_2b_1\end{pmatrix}=-\begin{pmatrix}b_2a_3-b_3a_2\\b_3a_1-b_1a_3\\b_1a_2-b_2a_1\end{pmatrix}\] \[=-\boldsymbol{b}\times \boldsymbol{a}\] ベクトル\(\boldsymbol{a},\boldsymbol{b}\)の大きさ\(a,b\)を使った、内積、外積の表現も見てみよう。
 間の角が\(\theta\)ベクトル\(\boldsymbol{a},\boldsymbol{b}\)が作る平面に\(xy\)平面を取る。更に\(\boldsymbol{a}\)が\(x\)軸と重なるよに取ると、 \[\boldsymbol{a}=\begin{pmatrix}a\\0\\0\end{pmatrix},\ \boldsymbol{b}=\begin{pmatrix}b\cos\theta\\b\sin\theta\\0\end{pmatrix}\] と表せる。 ベクトルの内積は \[\boldsymbol{a}\cdot\boldsymbol{b}=ab\cos\theta+0\cdot b\sin\theta+0\] \[\boldsymbol{a}\cdot\boldsymbol{b}=ab\cos\theta\] この表現を使うことで、角度\(\theta\)を求めることができる。 \[\boldsymbol{a}\cdot\boldsymbol{b}=ab\cos\theta=a_1b_1+a_2b_2+a_3b_3\] \[\theta=\arccos\frac{a_1b_1+a_2b_2+a_3b_3}{ab}\] ベクトルの外積は \[\boldsymbol{a}\times \boldsymbol{b}=\begin{pmatrix}0\cdot0-0\cdot b\sin\theta\\0\cdot b\cos\theta-a\cdot 0\\ab\sin\theta-0\cdot b\cos\theta\end{pmatrix}=ab\sin\theta\ \boldsymbol{e}_3\] ベクトル\(\boldsymbol{a},\boldsymbol{b}\)を辺とする平行四辺形の面積の大きさをもつ、\(\boldsymbol{a},\boldsymbol{b}\)とも垂直なベクトルとなる。
ベクトルの外積は右ねじの向きである。右ねじというのはベクトル\(\boldsymbol{a}\)から\(\boldsymbol{b}\)のほうに回転させてペットボトルキャップが進む方向である。そうなるように外積は定められている。僕はそれが覚えやすいと思う。
 (\(ℝ^3\)ユークリッド空間の基底)単位ベクトルを使った内積と外積も、お見せしよう。これが1番覚えやすいかも \[\boldsymbol{e}_1=\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix},\ \boldsymbol{e}_2=\begin{pmatrix}0\\1\\0\end{pmatrix},\ \boldsymbol{e}_3=\begin{pmatrix}0\\0\\1\end{pmatrix}\] 単位ベクトルは上記のような3つのベクトルである。まずは内積から、 \[\boldsymbol{e}_1\cdot\boldsymbol{e}_1=1,\ \boldsymbol{e}_2\cdot\boldsymbol{e}_2=1\] のように同じ添え字同士の内積は\(1\)になる。 \[\boldsymbol{e}_1\cdot\boldsymbol{e}_3=0,\ \boldsymbol{e}_3\cdot\boldsymbol{e}_1=0\] 違う添え字同士は\(0\)になる。外積は、 \[\boldsymbol{e}_1\times\boldsymbol{e}_1=\boldsymbol{0},\ \boldsymbol{e}_2\times\boldsymbol{e}_2=\boldsymbol{0}\] 同じ添え字同士の積は\(\boldsymbol{0}\)になる。 \[\boldsymbol{e}_1\times\boldsymbol{e}_2=\boldsymbol{e}_3,\ \boldsymbol{e}_2\times\boldsymbol{e}_1=-\boldsymbol{e}_3\] 添え字同士が異なる積はこれだけ覚えよう。後は\(1\to 2\to3\to1\)の順番で、添え字を変えても成り立つ。